最後の光の門を抜けると、そこは、ブリッツスタジアムだった。
ルカのではなく、ティーダのいたザナルカンドの、
しかも、シンに襲われた後のくずれたスタジアム。
そして、ティーダとアーロンが進み出る。
そこで待っていたのは・・・
「おせぇぞ、アーロン」
「すまん・・・」
ジェクトの文句に素直に謝るアーロン。
そして、ジェクトはティーダの方を見る。
「よぉ・・・」
ティーダも返す。
「あぁ・・・」
「なんでぇ!背ばっか伸びやがってヒョロヒョロじゃねぇか。
ちゃんとメシ食ってんのか、あぁ!?」
いつもの口調でジェクトは話す。
スピラに来るまでは嫌いで嫌いでしかたなかったその言い方。
その態度。
しかし、今のティーダにとっては・・・
ジェクトは今度は静かに・・・そしてやさしく言う。
「でかくなったな・・・」
その目は満足感と優しさに満ちていた。
「まだ、アンタのほうがデカい。」
うつむいたまま答えるティーダ。
「はっはっはっ なんつってもオレは『シン』だからなぁ。」
「笑えないっつーの・・・」
こんなときでもジェクトはやはりジェクトだった。
だが、彼らにはしなくてはならないことがある。
ジェクトが言う。
「じゃぁ・・・まぁ・・・なんだ、その・・・ケリ、つけるか。」
聞きたくなかったその言葉。
できれば避けたかったその言葉。
ティーダはジェクトに言えたのは一言だけ。
「バカ」
だが、ジェクトは笑って答える。
「はははっ、・・・・それでいいさ。」
後ろではユウナたちが二人を静かに見守っている。
ジェクトは息子を見つめて言った。
「どうすりゃいいか、わかってるな?」
声を絞り出すティーダ。
「あぁ」
「もう祈りの歌もあんまし聞こえねぇんだ。
もうちっとでオレは心の底からシンになっちまう。
間に合って助かったぜぇ。
んでよ、(戦いが)始まっちまったら、
オレは壊れちまう。
手加減とかできねぇからよ・・・
すまねえな。」
ジェクトの心が残っていたからこそ、
シンはザナルカンドへティーダを迎えに行き、
ミヘンセッションでティーダを見つめ、
エボン=ドームでたたずんでいたのだ。
徐々にシンに心を侵されるのに必死で対抗しながらも、
スピラの人々を襲うことを止められず、苦しんで・・・苦しんで・・・
ティーダは顔を上げて叫んだ。
「もういいって!うだうだ言ってないでさぁ!」
その頬は涙に濡れ、その声は大きくも震えていた。
「・・・だな」
微笑みながらそういって背を向け、
スタジアムの中心部へと歩き出すジェクト。
「じゃぁ、いっちょやるか!」
そう言ってジェクトは半分向こうが壊れて巨大な穴が口を
開けているスタジアムの床を蹴り、
不気味に光る穴へを身を投げた。
その瞬間、ティーダは走っていた。
ジェクトの手を、父の手を取ろうと、
必死で追いかけた。
かっこ悪くたっていい。
父親にしがみつきたかった。
父親を救ってやりたかった。
だが、ジェクトは光りの中へ落ちていく。
そして・・・
強い振動に襲われるスタジアム。
ジェクトの落ちた穴は光りを増し、
ティーダたちのまえに巨大な手が現われる。
そして、手の主が全貌を現した。
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